台湾映画『愛・殺』 女性同士の愛を撮り続ける周美玲監督の最新作 日本初上映!


©︎金禾創意

3月10日(水)にABCホールで台湾映画『愛・殺/ Wrath of Desire』の日本初上映が行われました。「第16回大阪アジアン映画祭」の特集企画《台湾:電影クラシックス、そして現在》の入選作品です。LGBTQを題材に映画やドラマを積極的に制作し続けるオープンリー・レズビアンのゼロ・チョウ(周美玲)監督の最新作。3月19日(金)の台湾での劇場公開に先駆け大阪アジアン映画祭で上映されました。

■ストーリー
検察官のイージエは、過失致死事件の被疑者シャオフォンと一夜の過ちで体の関係を持ってしまいます。その後シャオフォンは懲役刑を宣告され服役することに。彼女が服役中に、同性愛は罪との意識に苦しむカトリック教徒のイージエは、若い男性モンイェと結婚。しかし、シャオフォンが3年半の服役を終えて出所した後、3人はいびつな三角関係に…。
  


ウォン・チアウェイさん(左)とピース・ヤンさん ©︎金禾創意

■多様な性愛を大胆に描く
これまで主に若い女性同士の恋愛を撮ってきたチョウ監督。この最新作では多様な愛の形を大胆に描いています。主人公シャオフォンを演じたピース・ヤン(陽靚)さんは、事前に家族に「『ラスト、コーション』レベルの激しいベッドシーンがある」と告げたと明かしています。

また本作ではセクシャリティも性自認も多様な人たちが登場します。例えばシュー・ユーティンさん(徐宇霆)が演じる若い男性モンイェは、女性のファッションを着こなすジェンダーレスモデル。彼はこの役を演じるため、なんと2か月で10キロも減量したそうです。
  


シュー・ユーティンさん(左)とピース・ヤンさん ©︎金禾創意

■人間の欲望や激情を、日本発の「舞踏(Butoh)」で表現
人間の秘められた欲望や激情を前衛的な舞踏で表現する本作。舞踏は日本発の現代舞踊の一つで、海外でも高い評価を得ています。チョウ監督は、「醜」で「美」を表現する舞踏を演出に取り入れることで、「何事も目に見える表象だけでなく、本質的な意味まで見極めることが必要だと観客に伝えられると思います」と語っています。

これまでもチョウ監督は日本的要素をよく劇中に登場させています。北京が舞台の『替身』では恋に落ちる主役の女性2人の出会いは柔道の試合でしたし、『帥T空姐』では主役の同性の恋人は空手のシンガポール代表選手でした。また『Tattoo-刺青』の主役は母親が日本人の刺青師「竹子」。重要なモチーフで英題『Spider Lilies』にもなっている曼珠沙華も、日本語由来の語「彼岸花」が台詞で使われていました。
  


役のため髪を50センチも切ったピース・ヤンさん ©︎金禾創意

■ゼロ・チョウ(周美玲)監督
ゼロ・チョウ監督は、2007年に『Tattoo-刺青』でベルリン国際映画祭「テディベア賞」を台湾映画として初めて受賞。その後もLGBTQを題材にした映画やドラマを積極的に撮り続けています。2017年には「アジア6都市レインボープロジェクト(六城彩虹計畫)」として中華圏の6都市、すなわち中国の北京と成都、台北、香港、シンガポールとマレーシアのペナンでLGBTQを題材とした作品を制作する計画を立ち上げました。

すでに北京編『替身』、成都編『偽婚男女』、シンガポール編『帥T空姐』を制作し、本作『愛・殺』が台北編で4作目となります。そして5作目となるペナン編『弓蕉園的秘密(バナナ園の秘密)』が、今年4月に台湾の公共テレビ「公視(PTS)」の台湾語チャンネルで放送予定です。
   


ゼロ・チョウ監督(中央)と本作の出演者 ©︎金禾創意

なお、チョウ監督は、2019年に米アカデミー賞を主催する「映画芸術科学アカデミー」に招待されています。『ブロークバック・マウンテン』でアジア人初のアカデミー監督賞を受賞したアン・リー(李安)監督、『黒衣の刺客』でカンヌ国際映画祭にて監督賞を受賞したホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督に続き、3人目の台湾の監督となります。

『愛・殺』の次回の上映は3月14日(日)9時50分からで、会場はシネ・リーブル梅田。「第16回大阪アジアン映画祭」での最終上映となります。同会場の座席数は110席。チケットのご予約はお早めに。

■映画『愛・殺』公式Facebookページ
https://www.facebook.com/WrathofDesire/

第16回大阪アジアン映画祭は新型コロナウイルス感染症の影響等により、実施プログラムを中止または変更する場合があります。最新情報が公式ウェブサイトで発表されますので、ご確認くださいね。

詳細情報
1)大阪アジアン映画祭・スクリーン上映
■開催日程
3月14日(日)まで

■会場
梅田ブルク7、シネ・リーブル梅田、ABCホール

■料金
1,300円(前売り、当日ともに同料金)。当日券は前売券が完売していない上映回のみ販売。当日券には22歳までの方が500円で購入できる「青春22切符」もあります。
http://www.oaff.jp/2021/ja/ticket/index.html

■公式サイト
http://www.oaff.jp/2021/ja/index.html

2)「大阪アジアン・オンライン座」
■開催日程
《Theater ONE》
3月20日(土)23:59まで
《Theater OAFF2021》
3月14日(日)21:00から3月16日(火)21:00まで

■料金
《Theater ONE》
長編1作品1,000円、短編1作品500円、「Theater ONE PASS(全作品視聴可能パス)」3,000円
《Theater OAFF2021》
1作品1,300円

■配信サイト
https://online.oaff.jp/
 

(取材・文:Zac Oda)