3月6日(金)から15日(日)まで「⼤阪発。日本全国、そしてアジアへ!」をテーマに「第15回大阪アジアン映画祭」が開催されます。関西最大規模の映画イベントで、今回の上映作品数は過去最多タイとなる23の国・地域からの58本。会場は梅田ブルク7、梅田スカイビルの中にあるシネ・リーブル梅田、JR福島駅近くのABCホールなどです。
毎年LGBTQを主なテーマとする作品が入選している大阪アジアン映画祭。プログラミング・ディレクターの映画評論家、暉峻創三さん(以下、暉峻PD)に話を伺うと、「作品エントリーの段階でLGBTQ映画の応募が増えていますね」と最近の傾向を話し、続けて「でも選考の段階で特定のテーマが加点されることはないです。作品本位で選んだ結果として、毎年LGBTQ映画が入選しているということですね」と明かしました。では早速、そんな厳しい選考を経て入選を果たした今年の作品の中から、性自認や愛の形を多彩に描く5本を紹介します。よかったら、ぜひご覧くださいね。
台湾映画『君の心に刻んだ名前』
■『君の心に刻んだ名前』(世界初上映) 3/14(土)、3/15(日)
厳しい言論統制が敷かれ、多くの人が投獄・処刑された「白色テロ」時代がようやく終わった1980年代後半のミッション系男子校を舞台に、高校生・アハンとバーディの二人の愛とその行方をドラマチックに描いたラブストーリー。暉峻PDが「同性婚が合法化した台湾から誕生した、時代を象徴する作品」と絶賛する本作は、アメリカの業界紙『Variety』でも紹介されるなど世界的に注目を集める超話題作です。
http://www.oaff.jp/2020/ja/program/c15.html
台湾映画『ノーボディ』
■『ノーボディ』(世界初上映) 3/12(木)、3/15(日)
近所の人と一切口を利かず嫌われる孤独な老人と、父親の浮気の証拠を撮影するためにその老人の住む家に侵入した女子高生・ジェンジェン。反発する二人の間に徐々に奇妙な絆が生まれますが、周囲から二人の関係が不適切なものだと激しく非難され…。人が心に抱える秘密や痛みを、女性性を絡めて描いた秀作です。暉峻PDは「主人公の一つひとつの行動がドラマチック。こんな強烈な主人公はかつて見たことがない」と鮮やかな人間描写を絶賛しています。また、「台湾のLGBTQ作品から『君の心に刻んだ名前』と『ノーボディ』を大阪アジアン映画祭で世界初上映できるのは本当に光栄なこと」と喜びを語りました。
http://www.oaff.jp/2020/ja/program/t05.html
フィリピン映画『メタモルフォシス』
■『メタモルフォシス』(海外初上映) 3/10(火)、3/15(日)
フィリピンの田舎町で男の子として育ったアダムは15歳で突然、初潮を迎えます。男女両方の性器を持つアダムが、両親や医師、自分に思いを寄せる女子高生・エンジェルも巻き込みながら、男性として生きるか、女性として生きるかというアイデンティティを探す旅を描く青春映画です。「フィリピンはLGBTQ映画が多いですが、インターセックス(生まれつき男女両方の身体的特徴を持つ人)がテーマの作品は珍しい。本作はそれをごまかすことなく描いていて、なかなか強烈な映画です」と暉峻PD。主人公・アダムを演じたゴールド・アゼロンは、「シネマ・ワン・オリジナルズ映画祭」で最優秀主演男優賞を受賞しています。
http://www.oaff.jp/2020/ja/program/n05.html
マレーシア・台湾映画『ミス・アンディ』
■『ミス・アンディ』(世界初上映) 3/11(水)、3/13(金)
妻の死をきっかけに55歳で本来の自分の姿で生きることを決意したトランスジェンダー女性・アンディ。家族と仕事を失っても他人への優しさを忘れない彼女と、ベトナムからマレーシアに来た不法労働女性・ソフィアとその幼い息子・シャオカンとの間に家族のような関係が生まれますが…。アンディの苦難、家族との確執を丁寧に描くヒューマンドラマです。
http://www.oaff.jp/2020/ja/program/n06.html
大阪アジアン映画祭には毎年LGBTQを主題とした作品だけでなく、主人公の家族や友人、同僚としてLGBTQの人物が登場する映画も入選しています。最後に、今年の入選作からそんな作品の一つで《TAIWAN NIGHT(台湾ナイト)》上映作品に選ばれた話題作『大いなる餓え』を紹介します。
台湾映画『大いなる餓え』
■『大いなる餓え』(日本初上映) 3/8(日)、3/12(木) 《TAIWAN NIGHT》
保育園で給食を作る仕事をしている30歳の独身女性・インジュエンは体重が105キロ。宅配便のイケメン配達人への恋心もあり、スリムで美しい母親に強引に勧められたダイエットプログラムに打ち込んでいきますが…。小さな胸に親に言えない秘密を抱える男子園児との交友も描かれ、自分らしく生きたいと願う人の背中を押してくれる作品。昨年の「台北映画祭」で観客賞を受賞し、「釜山国際映画祭」や「サンディエゴ・アジアン映画祭」など台湾内外の映画祭で上映された話題作です。
http://www.oaff.jp/2020/ja/program/c05.html
大阪アジアン映画祭の入選作の中には、その後ほかの国内外の映画祭で上映される作品もあります。昨年のLGBTQ作品では、日本の映画祭だけを挙げても、香港映画『女は女である』が「大阪学生Queer映画祭」「あいち国際女性映画祭」「関西クィア映画祭」、『ビリーとエマ』が「レインボー・リール東京 ~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~」「関西クィア映画祭」に入選・上映されました。この2本については昨年の舞台挨拶の様子を本サイトで報告しています。よかったら、ご一読くださいね。
『女は女である』舞台挨拶レポート(2019年開催 第14回大阪アジアン映画祭)
『ビリーとエマ』舞台挨拶レポート(2019年開催 第14回大阪アジアン映画祭)
なお、今年の大阪アジアン映画祭は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止のため、全ての舞台挨拶とサイン会を中止し、一部のイベントや共催企画も中止・変更して規模縮小をはかった上で開催されます。
詳細情報
■開催日程
3月6日(⾦)から15 日(日)まで
■会場
梅⽥ブルク7、ABCホール 、シネ・リーブル梅⽥、ほか
■料金
前売券1,300円、当日券1,500円。当日券は前売券が完売していない上映回のみ販売。当日券には22歳までの方が500円で購入できる「青春22切符」もあります。
http://www.oaff.jp/2020/ja/ticket/index.html
■公式サイト
http://www.oaff.jp/2020/ja/index.html
(取材・文:Zac Oda)