「第14回大阪アジアン映画祭」が開幕! 初日に香港発LGBTQ映画が海外初上映!

 


香港映画『女は女である』 Q&Aの様子

 

オープニング・セレモニーに登壇したゲストの皆さん
 
「第14回大阪アジアン映画祭」が3月8日(⾦)に華々しく開幕しました!オープニング・セレモニーは阪急百貨店うめだ本店9階にある「阪急うめだホール」で行われ、国内外から集まったゲストが登壇しました。ゲストを代表して韓国映画『群山:鵞鳥を咏う』のチャン・リュル(張律)監督が挨拶し、「映画祭の期間中、たくさんの喜びを感じ、幸せな時間を過ごしてくださいね」と優しく観客に語りかけると、満席の会場は温かい拍手に包まれました。

 

オープニング作品『嵐電』(らんでん)
 
オープニング作品は井浦新さん主演、鈴木卓爾監督の『嵐電』(らんでん)。鈴⽊監督は「京都の外からやってきた⼈間と、京都の中にいる⼈が出会い、何が⽣まれるのかを描いたラブストーリーです。皆さんに、もっとニコニコしていただきたいという思いでつくりました」と作品への思いを語りました。井浦さんは「今、⼀緒に登壇している両サイドの若者たちは鈴⽊監督のもとで映画を学んでいる⽣徒で、この作品に参加しています。彼らと⼀緒にこの映画をやらせてもらえたのが⼀番の宝です」と感謝の気持ちを述べました。本作は2019年初夏から全国で順次公開される予定です。

 

香港映画『女は女である』
 
今年の大阪アジアン映画祭は例年と異なり、オープニング・セレモニーの前に4作品の上映がありました。その1作として海外初上映されたのが香港映画『女は女である』です。本作は女性になりたい気持ちを隠しながら生活する高校生と、20年前に性別適合手術を受け、今は妻となり母となったトランスジェンダー女性である2人が主人公の作品で、実話に基づいて制作されたそうです。この日の上映は平日の午後にもかかわらず、なんとチケットが完売に!満席の会場は熱気に包まれていました。

 

質問に答えるメイジー・グーシー・シュン(孫明希)監督
 
上映後、観客からの温かい拍手に包まれ、メイジー・グーシー・シュン(孫明希)監督、プロデューサーのミミ・ウォン(黄欣琴)さん、主演の1人であるトモ・ケリー(黄家恒)さんが登壇し、Q&Aセッションが開催されました。
 
『女は女である』は3人が初めて手掛けた長編の映画です。シュン監督は本作を制作するに至った経緯を聞かれると、「プロデューサーのウォンさんと過去に同じテーマのドキュメンタリー映画を何本か制作しました。その際に大勢のトランスジェンダーの方々に会ったんですが、家族との関係などでカミングアウトを怖がっている方や本当の自分を隠して生きている方がいました」と当時を振り返りました。そして、「彼ら、彼女らの物語を長編映画で取り上げ、きちんと社会に紹介したいと思ったんです」と初めて長編映画を監督することを決心した経緯を打ち明けました。

 

制作秘話を語るプロデューサーのミミ・ウォン(黄欣琴)さん
 
プロデューサーのウォンさんはご自身もトランス女性で、56歳のときにカミングアウトをしたそうです。ウォンさんは「香港のトランスジェンダーが置かれている状況を、香港だけでなく海外の方にも理解していただき、差別をしないよう呼び掛けたいという気持ちでこの映画をつくりました」と本作を制作した動機を語りました。そして、「この映画にはトモさん以外にトランスジェンダーの男性と女性が十数名、出演しています」と明かすと、会場から驚きの声が上がりました。「誰がトランスジェンダーか分からなかったと思います。そうであれば、なぜトランスジェンダーを差別するのでしょうか。この映画を通して、そういう問題を提起したかったんです」と力強く観客に訴えました。

 

出演を決めた理由を話す主演のトモ・ケリー(黄家恒)さん
 
主人公の1人である高校生・リンフォンを演じたトモさんもトランス女性です。大阪に1年、東京に5年間住んだことがあり、質問にも流暢な日本語で答えていました。トモさんは「日本では、はるな愛さんやマツコデラックスさんなどトランス女性や女装をされる方々が芸能界で活躍されていますが、香港ではほぼ目にすることがありません」と香港と日本の状況の違いを述べました。そして、「この映画に出演することで、私が香港でそういう人の一人になって、いろいろ発信できたらと思いました」と本作への出演を決意した理由を打ち明けました。
 
Q&Aセッションの最後にトモさんは「この映画をきっかけにトランスジェンダーについて、もっと皆さんに知っていただければと思います。理解が足りないから、『怖い』につながるんだと思います。いろいろ見たり、聞いたりしたら、きっと怖いことではないと分かっていただけると思います。ぜひ応援をよろしくお願いいたします!」と映画に対する熱い思いを語りました。

 

サイン会で観客と談笑するゲストの皆さん
 
続いて行われたサイン会ではゲストの皆さんは観客一人ひとりと楽しそうに話しながらサインをしていました。このようにゲストと観客の距離が近いのが「大阪アジアン映画祭」の大きな魅力の一つです。長蛇の列だったサイン会の終了後、ゲストの皆さんにお願いして、「Tsunagary Cafe(つながりカフェ)」公式サイトの読者に向けてメッセージを頂きました。
 
シュン監督: 日本のLGBTQ当事者の方々に、まず「Just be yourself.(自分らしく生きてください)」と言いたいです。一生、自分以外の誰かのふりをして生きることはできません。それはとても悲しいことです。もし自分のことを嫌う人がいても、放っておけばいいんです。自分に正直に生きるのがベストだと思います。
 
ウォンさん:現在、LGBTQ当事者が自分らしく生きるのは難しいかもしれません。私たちはその状況を変えたくて、この映画をつくりました。香港や日本の多くの方々が本作を通して私たちを知り、理解してくださればと思います。そしてLGBTQ当事者を含め、誰もが社会に受け入れられるようになることを祈っています。
 
トモさん:今回、10代の高校生役を演じましたが、私も高校生のころ悩んでいました。「自分が自分になる」っていうことは難しいことかもしれません。この映画が、皆さんが「自分になる」ための一つの力になれたらと思います。ぜひ応援してください!よろしくお願いします。

 
「Tsunagary Cafe(つながりカフェ)」の読者にメッセージをくださいました!
 
『女は女である』の次回の上映は3月15日(金)18時30分からで、場所は同じくシネ・リーブル梅田4です。「第14回大阪アジアン映画祭」での最終上映となります。15日(金)のQ&Aセッションにはシュン監督、プロデューサーのウォンさん、主演のトモさんに加え、脚本を担当したジャッキー・ウォンさんと出演したブベー・マク(麥詠楠)さんも登壇する予定です。
 

■「第14回大阪アジアン映画祭」は3月17日(日)まで。会場は梅田スカイビルの中にある「シネ・リーブル梅田」やJR福島駅近くの「ABCホール」などです。
 
■チケットは前売り券が1,300円で、各上映日の2日前まで全国のチケットぴあ店舗、セブン-イレブン、ぴあwebサイト予約などで購入できます。当日券は1,500円で前売券が完売していない上映回のみ、上映当日に各上映会場にて販売されます。なお、当日券には「青春22切符」があり、22歳までの方は500円で購入可能です。
 
■第14回大阪アジアン映画祭 公式サイト
http://www.oaff.jp/2019/ja/index.html
 

 
(取材・文:Zac Oda)
 
 
 
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