マレーシアに生きるトランス女性の家族愛を描く感動作『ミス・アンディ』世界初上映!


マレーシア・台湾映画『ミス・アンディ』

3月11日(水)にシネ・リーブル梅田でマレーシア・台湾映画『ミス・アンディ/Miss Andy/迷失安狄』の世界初上映が行われました。特集企画《台湾:電影ルネッサンス2020》と《ニューアクション! サウスイースト》の入選作。マレーシアに生きる中年のトランスジェンダー女性が主人公の作品です。トランス女性を描いた映画は最近増えており、大阪アジアン映画祭でも2018年にカンボジア映画『ポッピー ハリウッドに行く Redux』、2019年に香港映画『女は女である』が上映されています。
 
■ストーリー
妻と美容院を経営し、2人の子供と一緒に幸せな日々を過ごしていた主人公・アンディは、妻の死をきっかけに55歳で本来の自分の姿で生きることを決意します。しかし、その代償はあまりにも大きく、美容院は閉店、成人し独立した子供とは疎遠に。女性として生きるアンディが友人と呼べるのは元同僚で耳が不自由な若い男性・テクと、トランス女性の親友・ルーシーの2人だけです。あまり感情を表に出さず物静かなアンディは、これまで映画やドラマで描かれてきた明るくハッピーで派手なトランス女性のイメージと大きく異なります。
 
テクの運送業の仕事を手伝いながら、かつて妻と2人の子供と幸せに暮らした部屋で細々と孤独な日々を送るアンディでしたが、ベトナムから来た不法滞在者の女性・ソフィアとその幼い息子・シャオカンとの偶然の出会いにより、彼女の生活は少しずつ変わって行きます。2人の子供を育てた経験のあるアンディは子供の扱いに慣れ、シャオカンも彼女に懐き次第に本当の家族のような幸せな日々が始まりますが…。
 
本作はマレーシア社会に根強く残るトランス女性への過酷な偏見や差別を十分に知っていながら、それでも本来の姿で生きることを決心したアンディの強さ、家族愛、そして切ない恋を丁寧に描いた感動作です。トランス女性が受ける激しい差別をありのまま描くことで、逆に偏見や差別がなければセクシャルマイノリティーの人も他の家族と何ら変わらない幸せな家族を築けるとの希望が込められた作品になっています。
 
http://www.oaff.jp/2020/ja/program/t04.html
 


オリジナルポスター
  
『ミス・アンディ』の主人公がトランスジェンダー女性ということで、LGBTQ+とその理解者(Ally)の方たちのコミュニティー「MixRainbow ミックスレインボー」代表で自身もトランス女性である井餘田(いよた)みのりさんに、本作の感想を聞きました。上映後、感動し目に涙を浮かべて会場から出てきた井餘田さんは、まず「この作品はトランス女性の苦しみをリアルに表現していますね。想像だけではここまでリアルな描写はできない。監督たちは大勢のトランス女性の話を聞き、現実をよくリサーチをしたんだと思います」と感心した様子で話しました。
 
主人公のアンディと同年代の井餘田さん。自分と重なる部分がとても多かったそうです。その一つが子供のこと。アンディと子供たちとのやり取りを見て、井餘田さんは「自分の子供が結婚するときに、まず結婚式に招待してくれるのか。招待してくれたとしても行くべきなのか。子供の幸せを思ったら行かないほうがいいのかと常日頃考えています」とマレーシアと日本と異なる社会に住んでいながらも深く共感したことを明かしました。
 
井餘田さんは「よくインタビューで『トランスジェンダー女性として、日々どういうことを感じるか』と聞かれますが、この映画を観れば理解してもらえると思います。もちろん映画なので作られた部分もあるんでしょうが、近いことが実際に起きているんです」と語り、ぜひ大勢の人に本作を観てもらい、トランス女性について理解を深めてほしいと述べました。そして最後に「私はLGBTQ講師として講演もしているので、その一環として観てもらいたい。でも、お金がかかりそう」とユーモアを交えて笑顔で話しました。
 
「MixRainbow ミックスレインボー」は4月から本格的に活動を開始します。最初の交流会は4月12日(日)に尼崎市女性センター・トレピエで開催する予定です。詳しくは公式サイトをご覧くださいね。
 
公式Facebook
https://www.facebook.com/groups/431966920785091/learning_content/
 


「MixRainbow ミックスレインボー」代表・井餘田みのりさん
 
『ミス・アンディ』の次回の上映は3月13日(金)18時50分からで、会場は梅田ブルク7。「第15回大阪アジアン映画祭」での最終上映となります。残念ながら、本作のテディ・チン監督とプロデューサーのジン・オンさんが登壇する予定だった「シンポジウム:人生は宝くじのように 台湾とマレーシアの間にある希望」は中止になりました。
 
なお、今年の大阪アジアン映画祭は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止のため、全ての舞台挨拶とサイン会を中止し、一部のイベントや共催企画も中止・変更して規模縮小をはかった上で開催されます。最新の情報は公式サイトでご確認ください。
 
詳細情報
■開催日程
3月15 日(日)まで
 
■会場
梅⽥ブルク7、ABCホール 、シネ・リーブル梅⽥、ほか
 
■料金
前売券1,300円、当日券1,500円。当日券は前売券が完売していない上映回のみ販売。当日券には22歳までの方が500円で購入できる「青春22切符」もあります。
http://www.oaff.jp/2020/ja/ticket/index.html
 
■公式サイト
http://www.oaff.jp/2020/ja/index.html
 
 
(取材・文:Zac Oda)